24時間看護師常駐 【カイロス・アンド・カンパニーのホスピス住宅】

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食事・生活

お食事例

最期まで食べたいものを食べられるように支援する

在宅ホスピスと聞くと、訪問医や訪問看護師などが自宅に訪問して緩和ケアを提供するイメージを持たれると思いますが、独居や核家族化に伴い緩和ケアが提供される場所も変わってきています。高齢者施設、グループホーム、シェアハウス型ホスピス住宅など、自宅以外の場所でも緩和ケアが提供されるようになってきています。

「ホスピス住宅」という言葉を初めてお聞きになる方も多いと思いますが、病院と自宅の〝いいとこ取り”をした住まいになります。今回は、一つの例としてホスピス住宅で〝最期まで食べたいものを食べられるように支援する”ことについて取り上げてみたいと思います。まずは、食べたいものを食べることについてです。「毎食トマトを出してほしい」「バナナジュースが飲みたい」「この間の天ぷらがおいしかったので、またリクエストしたい」などの要望には、厨房スタッフができる限り応えるようにしています。ご逝去後、ご家族から「ビーフシチューが美味しかったと繰り返し話していましたよ」とのお話を伺うと、その日の食事が本人とご家族の記憶に残る、印象深い出来事だったのだとつくづく感じます。

また、ホスピス住宅への入居者は、がんや難病、誤飲性肺炎などの病気を抱えており、加齢、薬剤性、疾患や病状により誤嚥を起こしやすく、入居前の病院では経口摂取禁止と言われている方も少なくありません。しかしながら、「数口から試してみたら、どんどん食べられるようになり点滴が必要なくなりました」、「1日中傾眠でチアノーゼもありそろそろ家族を呼ぼうと思ったら、ビールが飲みたいと言ったので口腔ケア後にトライしたら上手に飲めました」という言葉を幾度となく耳にします。緩和ケアは「苦痛の予防と軽減を図り、生活の質(QOL)を向上させる」ことにありますが、今回のように食べることは、誤嚥のリスク(害)と本人の希望(益)との間でどうバランスを取れば良いか、ジレンマが生じやすいテーマの一つです。そのような悩ましい状況の中で、自宅と病院の〝いいとこ取り”とはどのようなことなのか、本人と家族の視点から表1にまとめてみました。

自宅のいいところは「本人が自分で選べること」にあります。それは同時に誤嚥リスクも引き受けるという自己責任と覚悟があってのことです。病院のいいところは、「専門性と安全性」にあります。つまり、その両者のいいとこ取りとは、「病状経過に伴い食べることの希望(自由と覚悟)は変化するであろう。だからこそ、その状況にあわせて本人と家族と関わるスタッフで十分な話し合いをもち、専門職としてその時々の最善のケアは何かを考え、一つでもできることを見つけて、それを実現しようとチームで努力し続けること」だと考えます。

表1 最期まで食べたいものを食べられるように支援するための“いいとこ取り”とは